これまで、介護事業者からのマネジメントシステムに関する相談は、たくさん受けてきましたが、実は、評価制度一つとってみても、多くの事業者が、制度をうまく活用できていません。それどころか「一度、導入したけれど、やめてしまった」という事業者も少なくありません。評価制度、キャリアパス制度の導入が、かえって職員のモチベーションを落とすことになりかねないのです。
その理由は、次の3つに集約されます。
介護職の皆さんは、そもそも他の多くの業種のように、評価されることには慣れていません。また、評価する方も、同じです。そのことを前提に制度を構築しないと、大変なことになります。
例えば、以下のような例が後を絶ちません。
では、不要かというと、そうではありません。数年前におこなったアンケートによると、介護現場で働くスタッフの不満のうち「正当な評価をしてくれない」は、第4位に入っています。
また、キャリアパス制度などは、介護職員処遇改善加算の条件にもなっていますから、導入しないわけにもいきません。
以下の例をご覧ください。
項目 | 期待レベル | 配点 | 自己採点 | 一次評価 | 最終評価 |
---|---|---|---|---|---|
挨拶 | 誰にでも気持ちの良い挨拶ができる | 5 | |||
協調性 | 自分の持つ情報を共有したり、同じ職場のスタッフと協力して仕事ができる | 5 | |||
会社への 貢献 |
数値に対する意識が高い | 5 |
さて、皆さんは、この失敗例のどこがいけないのかが、おわかりでしょうか?
ピンとこない方は、ぜひ、このシートを見ながら、誰かを実際に評価してみてください。
自信を持って、点数をつけることができるでしょうか?
きっと、難しいと思います。なぜなら、評価の基準が不明確だからです。
これでは、評価される側としては「上司の“好き嫌い”で、点数をつけているのではないか」と思われても、仕方がありません。
これだったら、厳しい言い方ですが、やらない方がましです。納得度も低いですし、そもそも評価制度は、評価結果をもとにして、社員を育成するための“道具”です。
このような曖昧な基準だったら、教育には全く役には立ちません。
こういう制度を私たちは「人に値札をつける制度」と呼んでいます。
「あなたは◯◯円の価値の人」と“値札”をつけているにすぎないのです。
かといって、具体化するのも難しいですね。営業職などのように「○千万円売上をあげた」のように、評価の基準を数値化することが難しいのが、介護の仕事です。
以前、ある法人の評価制度で「事故・ヒヤリハットが、半期で2回以下だった」というような評価基準を見たことがありますが、これでは事故を起こすことが前提となってしまいます。笑ってしまうような失敗事例ですが、無理やり数値化しようとすると、このようなものになりかねない難しさがあります。
現場にマッチしていないため、制度が上滑りしてしまう例も、多いように思います。
これは、制度構築過程に問題があります。
このような状態になってしまっていませんか?